≪≪損傷の原因≫≫


                                        ○摩擦による損傷


●コームによる損傷
コームによる物理的な刺激(力)により、
毛小皮が折れ曲がったり欠けたりしている。

キューティクルは、ウロコ状の硬いケラチンタンパク質が、4〜8重に毛先の方に向かって重なっており、外部からの刺激に十分耐えられるようにできています。しかし、日常頻繁に行うシャンプー、タオルドライ・ブラッシング、コーミング等により、ブラシやコームとの、あるいはキューティクルどうしの摩擦により、相当な刺激を受けます。

例えばシャンプーをするとき、泡立ちが悪い状態で洗うと、毛髪と毛髪との摩擦が大きくなります。泡は汚れを落とすだけでなく、クッションの役目をし、摩擦を防いでいるのです。
無理なブラッシングも毛髪に大きな摩擦を生じて、ダメージを与えます。無理にとかすことは避けて、ブローローション、前処理剤を使用する等、キューティクルに薄い皮膜を作ってブラシとの摩擦を減少させることが大切です。

キューティクルの一部に剥離が起きると、その部分から損傷が広がり、キューティクルが露出して毛髪は乾燥性になります。ブローローションや前処理剤は、毛髪に光沢やPPTを与えるだけでなく、摩擦を少なくし、静電気の発生を抑えて損傷を下げる大切な役目をしています。







                                         
○熱による損傷


ハンドドライヤー、アイロンなどによる損傷です。
毛髪はタンパク質なので熱に弱いのですが、皮膚よりは強い抵抗力を持っています。その限界点は120℃くらいまでです。
毛髪は、10%から15%の水分を含んでいますが、加熱していくと水分が蒸発し、カサカサになって手触りが悪くなります。さらに130℃〜150℃以上の熱を毛髪に加えていくと膨らんで変形を起こすほか、黒い髪の場合、茶褐色に変色していきます。また、キューティクルおよび毛随質中に気泡ができはじめ、毛髪に光沢、弾力がなくなって脆くなります。250℃前後のアイロンを約1分間毛髪の表面にあてると、その部分のキューティクルは溶けてしまいます。
このことから、アイロンを使用した縮毛矯正の場合、かなりの危険性が予想されます。特に、繰り返される度に加速度的に損傷します。



●アイロンパーマによる損傷
アイロンごての圧迫と熱により、
毛髪の一部がへこんでしまい
ちぎれかかっている例。

●コームによる損傷
コームによる物理的な刺激(力)により、
毛小皮が折れ曲がったり欠けたりしている。

●アイロンパーマによる断毛
 アイロンの強熱により、断毛した毛髪。
皮膚の部分に気泡が生じている。



                                     
○カットの不良による損傷

あまり切れないレーザーや、シザーズでカットしたり、カット技術の不良などによってキューティクルを削り取ってしまったりすると、その切り口や傷口から毛皮質の水分が蒸発したり、薬剤が浸透しやすくなり、枝毛や切れ毛が発生しやすくなります。
よく切れるレーザーやシザーズを使用し、毛髪の切断面をトリートメントなどで保護しておく必要があります。

  ●レザーカットした毛髪
 斜めに直線上に切断された様子を示している。
 一般にシザースカットした毛髪よりも切断面が大きく、
 鋭角的である。
 右図は、左図をさらに拡大したもの。
 切断面において、皮膚がむき出し状態になっている
 様子をよく示している。
●シザースカットした毛髪
 切断面において、両面から圧力がかかり、
 文字通り”はさんで切られた”状態をよく示している。
 切断面の上部に、伸びて引きちぎられた状態の毛小皮が
 いくつか見られるが、はさみの切れ味が悪いほど
 これがよく見られる。



                                        
○パーマ施術不良による損傷

コールド2浴式のパーマ剤を使用した場合、髪質に対する薬剤の選定を誤った場合には、1液が毛髪に対して過剰に反応してしまいます。また、2液の塗布ムラや量不足などがあると、毛髪が1液で還元されたままになり、毛髪が弱くなって損傷へとつながります。
ロッドアウト後も、毛髪の水洗が不十分で毛髪中にアルカリが残留したり酸化剤が残留したままになると、ケラチンタンパクの変性やメラニン色素の褪色を引き起こしたりします。


●パーマ時のオーバーテンションによる損傷
テンションのかけ過ぎにより、
毛髪表面が横にさけてしまった例。

●パーマネントウェーブ1回処理毛
 毛小皮の先端がわずかに浮き上がって
いるものが、いくつか見られる。

●パーマネントウェーブ3回処理毛
 毛小皮のめくれが大きくなり、
また、欠損もかなり見られるようになる。

                         パーマネントウェーブ2液の不具合について



●パーマによる断毛
 パーマのオーバープロセスにより、切断された毛髪。
 毛小皮は単にめくれているだけではなく、
融けたようになって剥がれがかっているものある。
また、繊維状の皮質がむき出しになっている
様子もはっきりと写し出されている。
パーマ(正確にはパーマネントウェーブ)をかけるには、「ロッド(髪を巻き付ける棒)」、「ペーパー」、「輪ゴム」、「コールドウェーブローション1液・2液」と、最低このくらいは必要です。また、髪の毛が損傷しているところには、我々は前処理と呼んでいますが損傷部分だけに施すトリートメント剤を塗布して、よく内部に浸透させ、一旦乾かしてから(乾かさないタイプもあり)、「1液」を全体につけます。

ロッドを巻く行為を「ワインディング」と言い、巻き終えてからそれぞれ「アクティブローション塗布」と呼ばれる、アプリケーターに入った1液を塗布するのですが、ここまででも前処理を全く行っていないサロンもあれば、形だけのサロンがあったりもします。
1液塗布には「つけ巻き(かかりにくい髪の毛や、比較的健康な髪の毛の場合)」か 「水巻き」と呼ばれる<水>をつけて巻く方法(かかりやすい髪や、損傷毛の場合)があります。


1液の役割としては、毛髪を軟化させることと、ロッドに忠実なウェーブを形成させることが挙げられます。

この時、毛髪に対しての損傷度合いを含む、毛髪診断の個人差や予想の甘さ・経験不足・判断ミス等により、直接的なダメージが与えられることがあります。この時のダメージはあとで「取り返しのつかない」ことになる場合もあります。
以上、「1液」に関して考えられる危険性は、美容師(技術者)であれば、おおよそ気にしてはいるよう(というよりもすべき)ですが、的外れ・見当違いだったりもするのです。


問題は2液処理にあります。1液の軟化の状態を見るために「テストカール」を行います。そして、必要な軟化が得られると2液処理に入るのですが、これがまた美容室によって方法もさまざまです。
2液の種類には、<臭素酸ナトリウム(ブロム酸塩)><過酸化水素水>の2通りが有りますが、全国シェアーは前者が90%を越えていますので、2液=臭素酸ナトリウムとして説明します。
最初に、中間酸リンス・pHバランス・TGストップ等と呼ばれる、中間酸リンス剤を使用していないサロンが全国にたくさん存在しています。この中間酸リンスを怠ったりすると・・・ウェーブダウン(パーマがとれやすい)。

●枝毛
 乾燥や手入れの不備により、
毛先が縦方向に大きく裂けてしまっている。
これには、

1. 枝毛・切れ毛になる。
2. 1液の作用が止まらずに髪の毛全体に損傷を受ける(残留アルカリによる)。
3. 特に毛先に強い損傷を受ける。

という危険性があります。この中間酸リンスが完璧に処理された後に、2液塗布をすることが重要かつ不可欠なのです。
2液塗布の方法にも問題が大有りです。
インターン生や見習いさんに技術者がお願いすることも多いのですが、ロッドの上からアプリケーターで「チューチューチュー」と、その意味も考えずに塗布しているようです。
「取り敢えずこの液体を上から一通りかければ良い」としか考えていないみたいで、きっと、技術者本人もそのくらいにしか思っていないのでしょう。


このような美容師さんが全体の80%は越えていると思います。大変恐ろしいことですね。
例えば、ロッドの直径が1.3cm、外周が約4cmだとします。
髪の長さが30cmの場合、7回転する事になるのですが、上からチョロチョロと液を塗布するだけで、しっかり内側の毛先の部分にまで浸透するでしょうか?しかも、毛先はたっぷりと1液が浸透したペーパーでガッチリとガードされていますのでかなり困難でしょう。


トイレットペーパーのロールの上からロールの芯に向けて塗布するようなものですから・・。
このことを良く理解し、中間酸リンス・2液塗布の方法・使用量・放置タイム・塗布回数を選択すべきなのです。
2液の不具合による損傷も中間酸リンスの時に考えられる影響と同じです。
しつこくなりますが、中間酸リンス・2液塗布、どちらも気の抜けない大切な技術であるのに、そこのところを軽視している美容師(美容室)がもあまりにも多いことを残念に思います。


髪の損傷については、大きく分けると、「自然損傷」と「化学的損傷」の2つに分類できます。

まず最初に自然損傷ついて。

自然損傷の要因としては、紫外線、摩擦、ブラッシング、シャンプー、手でよく触れる、ブロー、寝ている間の枕との摩擦などが挙げられます。
いつも右枕の人は、右サイドの方が傷んでいますし、真っ直ぐ上を向いて寝ている人は、後頭部に損傷を受けています。寝相が悪い人は、全体に平均的に傷んでいます。


利き腕によってもその差が出ます。右利きの人がブローをすると左サイドが扱いやすく、その分傷んでしまいます。
その他にも、毎日プールに通う人は、消毒剤(塩素)で髪の色が明るくなったり、パサパサしたり、くし通りも悪くギシギシした感じになります。
夏になると海水浴に出かけますが、無防備な髪の毛は1回の海水浴でもかなりの損傷を受けます。一つは5月から強くなる紫外線、もう一つは海水の塩分による毛髪損傷がその主な原因です。海水が髪の毛に残ったまま夏の強い日差しにさらされて乾燥し、そのままの状態で時間を過ごすと摩擦による毛髪損傷も考えられます。
ここで海水浴対策の良い方法をお教えしましょう。


朝出かける前にトリートメントを頭皮につかないように髪の毛にたっぷり塗布して、それから編み込みをするか、きれいにゴムでまとめて帽子を必ずかぶって海へ出かけましょう。これだけでも毛髪損傷に対してかなりの予防効果があります。髪の毛は一度傷んでしまうと自己回復能力がありませんから、元には戻りません。髪の毛を大切にするには常にこのことを頭に入れておく必要があります。


●ヘアブリーチ1回処理毛
 毛小皮の先端が細かく欠けている箇所が
多く見られ、また、欠けた毛小皮の屑が
いたるところに付着している。


●ヘアブリーチ3回処理毛
 毛小皮の先端がめくれかかっている部分が
多く見られるようになり、
毛小皮の屑の付着量も増える。
 毛小皮のめくれ具合が、ロッドに巻かれる
パーマ処理に較べて少ないことが特徴的である。

次に化学的損傷ですが、1年に髪の毛の伸びる速さが約15〜20cmくらいですので、約30cmの髪の毛なら大体2年で伸びた計算になります。
毎日シャンプーする人だと、2年間で毛先に730回のシャンプーをしたことになります。ちょうど半分の15cmくらいのところは伸びてから約1年ですので365回のシャンプー回数となります。
シャンプーでも根元と毛先の差がかなりあります。ジーパンを毎日洗って2年後にはどうなっているか想像がつきますか?多分ボロボロになっているでしょう。
このことから考えてみても、タンパク質でできている髪の毛は、普通の繊維と比べても十分な強度があることがわかります。


しかし、この丈夫な髪の毛も、化学薬品による化学変化には弱いのです。
化学的損傷にはヘアカラー、ブリーチ、パーマネントウェーブ、ストレートパーマ、縮毛矯正等があります。
例えば、今までせっかく気を遣ってきれいに伸ばしてきた髪でも、知識のない技術者による粗雑なパーマネントウェーブやストレートパーマにかかると一度でかなりのダメージを受け、取り返しのつかない結果になりかねません。


美容室の宣伝文句で「かければかけるほどよくなるパーマ」というのを今でも時々耳にしますが、これは科学的にも物理的にも絶対にありえません。
ただ、この宣伝文句の発祥は、美容室ではなくメーカー側が販売促進のために作ったキャッチフレーズである場合が多いのです。それを知識の無い美容師や疑いを知らない美容師が多いために、メーカーの言いなりになっているだけなのです。
でも結果的にお客様に「ウソ」を伝えているわけですから、罪は免れません。

では、美容室で行われているメニューの中で、どれが一番髪の毛に悪影響を与えるのでしょうか?
第1位はブリーチ、第2位は明るい白髪染め、第3位は縮毛矯正を含むストレートパーマ・パーマ関連技術(知識のない美容師が行えば第1位になる可能性大)ですから、美容室を選ぶというより美容師さんを選ぶしかないのです。同じ美容室の中でも美容師さんが何人もいるところでしたら一人ひとり経験も知識も違うわけですから、そういう意味で技術者選びをした方が良いでしょう。


最近、自分でヘアカラーをしたり、ブリーチをしたりする人が増えていますが、カラー関係はベテラン美容師でも奥が深く難しい技術ですので、髪の毛の損傷が気になる方へは特にお奨めできません。ホームヘアカラーやブリーチで随分髪の毛を傷めている方を最近良く見ます。髪の毛の色で「汚いイメージ」や「きれいなイメージ」、「清純さ」いろいろなものが見えてきますね。

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このコーナーの画像は新美容出版社発行・日本パーマネント・ウェーブ液工業組合編著「SCIENCE of WAVE」より引用させていただきました。

損傷毛を考える

毛髪は、同じ人でも生えている部位によって、また1本の毛髪でも、その部分(根元部、中、間部、毛先)で太さが異なり、髪質も異なっています。


●健康毛
毛小皮の欠損や異常はほとんど見られず、
毛小皮がしっかりと密に重なり合っている。

これは、毛髪が毛乳頭で誕生する過程で、その人の栄養状態、体調等の影響に左右されて、太さや髪質が変わるからです。また、毛幹部に伸びてきてからも、さまざまな外部刺激を受け、毛髪は変化します。
根元は太くても、毛先に行くに従い細く、損傷度も大きくなっています。毛先に行くほど、外部刺激を受けた期間が長いからです。根元部から毛先までの全体を正常にため保つために、損傷予防とアフターケアが大切です。
毛髪が損傷する原因として、これまでのパーマ剤やヘアカラーなどの科学的処理が主に挙げられてきました。最近、毛髪化粧品業界をはじめ、各方面から毛髪損傷の原因に関する文献が多く発表されて、理由はそう単純ではないことがわかりかけています。今後さらに、毛髪が損傷する原因について、幅広い観点から見ていく必要があります。


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■ 髪の損傷について